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シンガポール国立大学ランドスケープデザイン専攻とのワークショップ

12月6日から10日まで、京北、美山で、アジアの大学でトップのシンガポール国立大学ランドスケープ専攻の学生と茅葺き、里山環境、都市と農村、森から海までの自然の循環、心身の健康をテーマにワークショップを行いました。
2020年春頃から企画してきたのですが、コロナもあり、なかなか実現ができていませんでしたが、ついに開催できました!

1日目

6日は京都市内の将軍塚に上り、かつて、桓武天皇と和気清麻呂公がここに新しい都(後の平安京、京都)をつくることを決めた場所で、平安京造営や日本という国づくりやシステム構築に多大な貢献をしてきた秦氏の話も行い、その拠点だった太秦と嵐山をかすめ、京北へ。山国神社や常照皇寺に案内し、木材を伐り出し、桂川に流し都や天皇の内裏、神社仏閣を造営し、その後も食糧、木材、燃料など多くを都に送り、天皇直轄の領地である禁裏御料地として、大嘗宮や高御座の御用材も提供し続け、明治になるまで都、天皇家を支えてきた歴史と納豆餅などの独自の文化を説明。
茅葺きのいのちや資源の循環性、稲作、茅葺き、人々の営みと自然環境の深い関係性と未来に生かせるだろうポイントについても説明しました。
夜は京北のご近所さんの家に泊まらせていただき、学生さんたちは薪ストーブや畑での野菜の収穫も初体験。採れたての野菜でみんなで鍋をつくり、少し寒い日本の冬をとても楽しんでいました。和歌山で茅葺屋根に住み、DIYで家を改修し、実践的に自給自足に近い生活を送っているLeeさんの話も聴くことができました。

2日目

7日は地元の商工会や猟師、料亭屋さん、鯖寿司屋さんなどが主催するジビエツアーのモニタリングツアーに参加。主催者の方がお客さんを募集していたところちょうどタイミングがあい、地域の自然環境の変遷や現状について勉強にもなると思い参加してもらいました。


かつては調和の取れていた里山の環境も、人が戦後、プロパンガスを使い始め、杉、檜の人工林も増え、だんだんと人が山に入らなくなり山が荒れ、山に食糧がなくなり、凍結防止剤を鹿がなめて越冬できる個体数が増え、獣害という田んぼ、畑を荒らすようになってしまい、駆除されるようになってしまったということに学生さんたちは心を傷めて涙を流す子もいました。

自分も氏神の神獣が鹿、キツネということもあり、獣害とされて駆除されることにはとても心を傷めていましたが、猟師さんの話を聴いて、縄文から続く狩猟の文化でもあるということを改めて考え直すこともできました。あくまで必要な分だけを感謝の念とともに命をいただくということは古代から行われてきたことだと思います。しかし、過度にむやみに命を奪うよりも、それを防ぐ方法を考え、実行していくことが人間として求められていることだと思います。かつての先人が当たり前のようにやっていたように。建築、土木、都市計画、社会システム、獣害・・・と、自然と共生する文明を古くから築いてきた日本が逆に世界的にも共生できていない国になってしまったことは非常に残念なことであり、変えていきたいことでもあり、今まで縄文から続く日本の歴史や文化について研究、活動してきたこともあり、海外の人が今の日本についてどう思うかも興味深い点でした。


その後は茅葺屋根に住んでいるお宅にお邪魔し、茅葺きに住まう苦労や良さについてお話を聴き、ドローンで周辺環境の空撮を行いました。言葉が通じなくても学生さんたちと家主の方が心を通して交流していた姿にとても感動し、昔、中学生の頃に中国の中学校に訪問しあたたかい歓迎を受けたこと、高校生の頃にドイツの大学を訪問しホームステイしとてもよくしてもらったことを思い出し、自分も心あたたまる時間でした。

 

その後は京北で歴史や文化を継承し、実際にご自分で茅刈りを行い、田んぼ畑、鶏を飼い、伝統と現代を融合させた暮らしを続け、研究対象となっていただいた方の拠点である「茅の家」でお話を聴きながら交流していただきました。シンガポールは東京以上に発展を続ける都市国家で政府によるトップダウンの政治、管理もあり、里山のような営みや自然環境はありませんが、学生さんの中で日本の里山で暮らしてみたいという子もいました。
日本は地域ごとに多様性があり、歴史や文化が詰まっていて、今もなお茅葺きのような伝統も続いていてとても魅力に感じるようです。

夜は名古屋市立大学の先生とその学生さんが合流し、普段話せない夜の語らいを楽しみました。

3日目

8日は午前中に京北の茅場で茅刈りを行いました。茅刈りの仕方を教え、みんな集中して楽しんでやっていた姿に国境を超えることのできる活動に改めて可能性を感じました。思っていたよりもたくさん収穫でき、お世話になった方の屋根に使えるようにしたいと思っています。お昼はご近所さんの鯖寿司屋さんに作っていただいた鯖寿司を茅場で堪能。シンガポールにはない味だと思うので内心どうかと心配もしていましたが、とてもおいしかったようで、一人の学生さんは日本語を勉強していたこともあり、自分に質問しながらも、「今までで一番おいしいお昼ご飯だった」と日本語で言ってくれました!

今回のワークショップでいろいろとできる限り、地元の人と交流し、地元のよさを体感できるように考えて予定を作ってきましたが、分かりやすいリアクションを返してくれるので、こちらも本当に嬉しくなりました。

その後は美山に移動し、茅葺屋根の宿にチェックイン。土間や囲炉裏もあり、屋根裏にも泊まれ、おしゃれな宿にみんな興奮していました。夜は美山のお風呂に入ってめちゃくちゃリフレッシュできて気持ちよかったとみんな感動していました。夕食は地元のご飯に舌鼓。その後は兵庫県立大学の先生も交えて囲炉裏を囲って飲み会。ゆっくりした時間をみんなで楽しみました。

4日目

9日は午前中にかやぶきの里を案内し、茅葺きや日本の典型的な集落の形成、その変遷、美山と京北の対比などについて説明しました。資料館では縁側でみんな日向ぼっこして気持ちよさそうにしていました。

その後は宿で夕方の発表に向けて学生さんたちはがんばって作業。

自分たちは奈良女子大学の博士課程の方と合流し、美山を案内。ランドスケープなどについて情報交換したり、温泉にも入ったりして少しリフレッシュしました。

そして、夕方から学生さんたちがこの4日間で吸収し、分析して分かったことについて発表してもらいました。自分が説明してきたことをちゃんと聴いて理解して、それぞれの視点で分析し、今後のシンガポールに生かせる点について考えてくれていたこと、それぞれこの4日間で貴重な経験ができたということを聴き、とても感動しました笑

その後は囲炉裏を囲ってお疲れさま会を開きました。学生さんたちにお礼にシンガポール国立大学のジャケットをいただき、とても嬉しかったです。その後今日までずっと着ています笑

自分にとって、シンガポール人の英語はインド人、イタリア人の英語とともにネイティブの英語よりも難しい世界3大難しい英語で、なかなか聴き取りに苦労しましたが、みんな子どものように純粋で底なしに明るく元気で、一緒にいる自分も自然と元気になり、明るい気持ちになりました。

英語でのコミュニケーションも心地よく、日本語ではない爽快さと自由な感じを久々に感じました。

やはり自分は日本人でありながらも、海外とつながって、外から日本のよさを発信しながら、古今東西温故知新をテーマにこれからも活躍していきたいと強く思いました。

5日目

10日は宿のチェックアウトと同時に解散、送迎の車を見送る時にウルっと来てしまいました。

中学の頃や高校の頃に仲良くなった中国人、ドイツ人と別れる時も涙が止まらなくなったことを思い出しました。

改めて国際交流のよさを感じ、これから海外でもどんどん活動、仕事をしていきたいと思いました。

 

PhDも海外で取ろうと考えていましたが、英語、中国語、マレー語などが使え、これからのアジアの時代を牽引するシンガポールでもありますが、シンガポール周辺のアジア、ポリネシアの国にも茅葺きはたくさんあるし、欧米ともつなぎやすいところもあると思いますし、現代と伝統を融合させて未来を考える拠点としてもシンガポールもいいなと思いました。

 

他に何もできないくらい充実した5日間でしたが、大きな刺激と感動が得られた時間でした。

 

国内外の人が集い、学びと交流があり、未来を考え創造することができるワークショップ、また今後もいろんな大学や専門分野の方たちと開いていけたらいいなと思います。

ご協力いただいた多くの方々、ありがとうございました!

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