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龍脈(氣の流れ)

この前、ランドスケープの勉強にと、京都のとある造園会社で行われたお寺の庭の仕事をしてきた。そこで感じた氣の流れとこれからの建築、都市を考える。

ここは、笠原寺(りゅうげんじ)という、山科盆地にあるお寺で、弘法大師1150年御遠忌(昭和59年)の記念事業として開山された新しいお寺だった。

山を背景に堂々と建つ境内は迫力のある趣だった。

ここは陽当たりもよく、龍の滝という小さな滝があり小川が流れているが、何か山の方から氣が流れているを感じた。最近、疲れがたまっていたが、ここで一日仕事をしていると何やらエネルギーが満たされていくように感じた。水と空気、エネルギーの流れは重要で、それらが停滞すると人の精神も物質も停滞し腐っていく。それらの流れがいいところには龍が住み着き、喜ぶと昔の人は言った。そのような龍が住まう場所、その場を浄化し、水、空気、エネルギーの循環をよくし、その下にある集落に新鮮な水や空気、エネルギーを送るためにつくられたのが、神社であり、お寺だった。そこは人が集い、癒され、学び、交流し、遊ぶ場所でもあった。今は停滞しているところも多くなってしまっているが・・・

もともと、日本人は縄文時代には森の中、あるいは斜面地に多く住んでいた。水田稲作が大陸から伝わり、徐々に低地の川の近くに住むようになっていった。縄文時代には小規模な集落が多かったが、農耕により、富を蓄積させ、村を囲い、お互いに争うようになると、軍事力を強くするためにも農業生産力を上げるためにも人口を増やす必要があり大規模な村が築かれるようになり、どうしても広い土地が必要だった。そして、どんどん低地に住むようになっていった。しかし、森や山、川との関係性を大事にしてきた。そこには森から海までの自然の循環の営みがあった。そこには資源の循環もあるが、水、空気、エネルギー、命の循環もある。

今、世界中で新型コロナウィルスの影響がまだ続き、人の心も社会も疲弊してきているが、今こそ、このような循環を取り戻すことが必要だと思う。そのための建築や都市計画を行っていくこともコロナウィルスや他の多くの疫病を根本的に改善し、人と自然が共生していくために重要な試みだと思う。

平安京も江戸も多くの都市計画はそれらの流れを大事にしてつくられてきた。今の都市計画は経済的合理性のために本来つくってはいけないところを造成し、埋め立て、盛り土、切土などをしてつくられている。いざ地震や洪水、気候変動が起これば脆弱な場所にわざわざ人は住むようになってしまった。2011年3月11日の東北大震災の時も、平安時代の貞観地震で津波の被害を受けた先人がこれより下には住んではいけないとわざわざ石碑を立てていたのにそれを無視し低い場所に街をつくってしまった結果、あの津波で何人の犠牲者を出したのだろう。

先人は何千年、何万年、いやそれ以上の間、自然と共生してきた経験を文化の背景に、物として、あるいは遺伝子の中で、我々に伝えようとしてくれている。そのメッセージを受け取れるかどうか、そして、それを生かすかどうか、今後、人類が健康的に幸せに暮らすためにも、そのメッセージを大切にする必要があると思う。

そのようなメッセージを大事にしながら、これからの建築や都市をデザインしていきたい。それが地球とともに、あらゆる命とともに幸せに生きていくことにつながると信じて。

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