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Scientific research on traditional wisdom

Microbial Environment

健康をつくり出す茅葺きの微生物環境   茅葺屋根などの伝統的な建築、環境のあり方が人の健康に寄与する可能性があるということが微生物環境の科学的な研究によって明らかになってきました。   茅葺屋根に関して言うと、屋根の材料である茅は日本ではススキ、ヨシ、オギ、稲藁、小麦藁、笹などが使われていますが、それらはイネ科の多年草です。稲藁からは納豆をつくるもとになる納豆菌が出ており、納豆菌は免疫力を上げてくれますが、京都大学農学部の調査により、ススキの菌を調べたところ、ススキからも納豆菌が出ていることが明らかになりました。   また、京都大学、広島大学、広島工業大学などの研究では、茅葺き古民家の中の微生物環境は、家の内側と外側でほとんど同じであり、室内でも自然由来の微生物が多く、水廻りも含めて病原性の菌の繁殖が観られないという結果が出ました(*1)。一般的な現代住宅では、家の室内では人由来の微生物が多く、家の外側は自然由来の微生物が多く、内外は微生物環境としても分断されていることが多く、また、水廻りでは病原性の菌が繁殖していることが多くあります。しかし、茅葺屋根ではその逆で、人と自然の微生物がバランスよく保たれ、病気を防ぐ環境であることが分かりました。   以上のことから、伝統的な茅葺屋根では人の健康を保つ力があるということが言えます。   また、茅葺職人や茅葺屋根に実際に住む多くの方の話によると、茅葺屋根に住んでいる人は一般的なハウスメーカーやコンクリートのマンションで暮らす人よりも寿命が長く、元気な人が多いということが分かりました。今後の研究を進めていく必要がありますが、茅をはじめ、木材、竹、土などの茅葺屋根を構成している材料から出ている菌と腸内細菌の関係性もあると考えられます。   茅葺屋根は葺き替えで降ろした茅は田んぼや畑に肥料として入れていましたが、茅葺屋根の住人による証言では、茅を肥料として入れて育てた作物はその育てた人の体調にあうような作物になると言います。人体には数百兆個の細菌が常在し、その約9 割は腸内にあり、人の免疫システムや精神状態までもが腸内細菌によってコントロールされていると最近の科学で徐々に明らかになってきておりますが、人体の身の回りの半径1mを包み込むように腸内細菌フローラが漂っているそうです。その腸内細菌と建築から出ている菌が共生関係にあり、お互いの健康や寿命を長くしている可能性もあるのかもしれません。実際に、人が住まなくなった家は5年ほどで朽ちていきます。人から出ている何かが家に影響を与えているからだとも言えるかもしれません。   今後の研究によって、人と建築、自然の微生物環境の関係性をより明らかにし、今後の住環境や都市環境、地域計画、ランドスケープ、都市計画、国土づくりに生かしていきたいと思います。 腸内細菌の影響・免疫力を上げる・成人病予防(肥満、糖尿病など)・精神、情動行動・脳活動、学習機能など *1 Daisuke Ogura, Fumito Maruyama et al(2021), “Relationship between the Microbiome and Indoor Temperature/Humidity in a Traditional Japanese House with a Thatched Roof in Kyoto, Japan”, Diversity 2021  

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Hypersonic Sound Environment

人間の可聴域(耳がいい人でも2 万Hz 前後まで)を超える音域を高周波または超音波と呼ばれています。それは耳ではなく、人間の場合は皮膚にある受容体(センサー)通じて受け取っており、免疫力の向上、ストレスの低減に効果があり、美しいものをより美しく感じるという人間本来の感性を育てる効果があることが研究で明らかになっています。高周波の第一人者としては、世界的アニメ映画「AKIRA」の音楽を製作した山城祥二氏(本名:大橋力氏。文部省放送教育開発センター教授、ATR人間情報通信研究所感性脳機能特別研究室長などを経て公益財団法人国際科学振興財団情報環境研究所所長。文明科学研究所所長。農学博士)、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所の本田学氏らが研究を行っています。また、他分野の研究者も、各自調査研究を行っています。   Regreenでは、国内外の森、茅葺きや里山環境、伝統音楽の中にある高周波環境を測定し、高周波の知見を生かした建築、ランドスケープ、都市環境のデザインを行っています。   Regreenで行った高周波環境測定結果   茅刈り 鎌で茅を刈り取る時の「ザクッザクッ」という音からは18万Hzを超える高周波が出ています。その他にも茅を束ねる作業など、茅を触って音が出ている時には高周波が出ています。屋根材を収穫するための作業は、人の心身の健康を整えることにもつながり、まさに一石二鳥とも言えます。また、茅刈りを毎年行うことで土の状態も、茅の質も向上し、茅ネズミや虫、他の生きものも育ちやすい環境となり、みんなにとっていい環境をつくることができます。   茅葺屋根の葺き替え作業 茅葺屋根の葺き替え作業は様々な工程、作業から成り立っていますが、手や道具を使って茅を扱う作業のほとんどからは高周波が出ています。特に、タタキという道具を使って茅の先端を揃える作業、鋏で茅の先端を刈り揃える作業では、熟練度が高い人ほど、高周波が出ていました。熟練した技術を身に付けた職人さんの仕事からは心地よい音が出ていますが、高周波の観点からもそれが言えるということが分かりました。   この高周波や茅葺きと高周波の関係性、それを生かした福祉や建築、ランドスケープの可能性について、BBCに2022年に取材され2023年3月にラジオ番組として世界に放送されました。ご関心ありましたらぜひご視聴ください。 その他、Regreenで実際に測定した高周波の事例です。   森   川   用水路   水のせせらぎ   呼吸法     ハモンドオルガン NHKが使用していたアメリカのハモンド社製のハモンドオルガンは今、福島県福島市の古関裕而記念館に寄贈され、毎週土日演奏されています。音色が心地よく、癒されるという声が多いということで高周波を測定してみると、18万Hzを超える高周波が出ていました。また、今まで測定してきた中でも強い音が出ていました。心地よい、癒される音からは可聴域を超えた高周波が出ていることが多く、ハモンドオルガンはそのいい例でした。   法螺貝 和太鼓、尺八など、伝統的な楽器からは高周波が出ていることが多いですが、法螺貝からも強い高周波が出ていました。山伏の修行や儀式、戦の時などに使われ、2km先まで届くと言われる法螺貝の音色は人の心を落ち着け、癒し、免疫を高めるという作用もあったということが分かりました。そのような作用を先人は科学的なデータがない時代でも理解しており、人の心を癒すために宗教的な場で使っていた可能性が高いと考えられます。   このように、伝統的な営み、宗教的な場で使われる楽器からは高周波が出ていることが多く、先人が培ってきたことは人の心を癒し、免疫力を上げ、人間本来の感性を活性化させる働きが古来からあったということが分かります。 それは作業、宗教的な儀式、行事など切り離されたものではなく、一つのカタチとしてあった、それは、地球そのものが発しているものを人間という存在を通して発せられたものであるということも言えるかもしれません。

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